KMバイオロジクス株式会社

スモールスタートと人材育成で利用定着化を促進|KMバイオロジクス株式会社


データにもとづく営業・マーケティングを可能とする環境を実現

導入の背景

Salesforce に蓄積されたデータの活用が課題に

KMバイオロジクス株式会社は、熊本県熊本市に本社を置き、ヒト用ワクチンや血漿分画製剤の研究・開発・製造・供給、動物用ワクチンの製造などを手がける、国内唯一のバイオロジクス企業です。同社は、主に国内のビジネスユーザーを顧客として事業を展開し、これまでに世界初の製品を 8 製品、国内初の製品を 18 製品開発するなど、バイオテクノロジー領域に特化した高い技術力で知られています。

そうしたビジネスを進める中、社内で浮上したのが、データ活用に関する課題です。医薬営業本部 営業推進部 営業企画課デジタルマーケティングチーム リーダーの黒瀬駿氏はいいます。「当社は営業とデジタルマーケティングの強化を目指して 2017 年に Salesforce を導入し、医薬営業本部で利用を開始しました。

それによって営業に関するデータを収集する環境が整い、以降の数年間でさまざまなデータが蓄積されました。ところが活用に関しては、営業の活動データや売上データなどのシンプルな指標を Salesforce のダッシュボードやグラフで見て議論する程度に留まっていました」(黒瀬氏)

同社では当時、あるBIツールを利用していたものの、ライセンス体系上の制約により、アクセスできるのはごく一部の担当者のみで、データの加工や分析の業務は完全に属人化していました。各担当者が依頼を受けて Excel を使ってデータ分析し、必要に応じてグラフや資料を作成するという、個人のスキルやリソースに依存した状態だったのです。企画管理本部 デジタル IT 部 部長の廣田一薫氏は、2022 年に入社した当時の状況をこう振り返ります。

「営業以外のシーンで、データにもとづく意思決定はほとんど行われていませんでした。そもそもどこにどういうデータが蓄積されていて、どう使えるかもわかっていない、ゆえにニーズもない、という状態でした」(廣田氏)

そうした状況を打破するため、同社は 2020 年、医薬営業本部内にデジタルマーケティングチームを立ち上げ、データ分析力の向上に向けて Tableau の導入に踏み切ったのです。

医薬営業本部内にデジタルマーケティングチームを立ち上げ、データ分析力の向上に向けて Tableau の導入に踏み切った

営業以外のシーンで、データにもとづく意思決定はほとんど行われていませんでした。そもそもどこにどういうデータが蓄積されていて、どう使えるかもわかっていない、ゆえにニーズもない、という状態でした

Tableau の導入・運用環境について

スモールスタートと教育でユーザー・利用範囲を拡大

同社は、Tableau の社内定着化を円滑に進めるためスモールスタートを選択し、まずはデジタルマーケティングチームの業務に限定して利用を開始しました。同チームの山本彩乃氏は、Tableau に触ったときの印象についてこう語ります。

「従来の BI ツールは、グルーピングの項目数やグラフの種類が限られている、自由にカスタムできる要素が少ないなど、できないことがたくさんありました。それに対して Tableau は、『まさにこういうものを見せたかったんだ』というダッシュボードを簡単に作ることができる。触るのがすぐに楽しくなりました」(山本氏)

同チームは、Tableau Prep を利用し、従来手作業だったデータクレンジングとデータ加工の業務の大幅な効率化に成功。黒瀬氏はいいます。

「取り組みが思いのほかうまくいったことで、当初は新たなツールの導入に対し少なからず抵抗感のあった社内からも Tableau を評価する声が上がり始めました。その小さな成功体験をもって上長を説得し、Tableau を利用する部署と業務範囲を段階的に拡大していきました」(黒瀬氏)

同社は、部内で特に高度なデータ分析力が求められる各製品のブランドマネージャーに Tableau Explorer ライセンスを付与し、3日間の教育プログラムを 4 か月間にわたって実施。基礎から実際の業務関連のダッシュボード作成までを学ばせる実践的な内容でスキルを習得させました。また、相談会や勉強会、研修動画配信などを定期的に行い、ユーザーの拡大と定着化を進めました。

「Tableau のダッシュボードを見る方法は、これまで通り Salesforce にアクセスし、そこに貼りつけてあるリンクから飛ぶだけ。ですから実は営業のユーザーには、Tableau を使っているという意識はあまりありません。定着化のための工夫として、新しい BI ツールを使っていることを“あえて意識させない”ようにしたわけです。また、Tableau はオンライントレーニングや Tableau コミュニティの活動も充実しているので、地方企業という地理的なハンディを感じることなく、短期間でスキル習得や社内展開を進めることができました」(黒瀬氏)

その結果、Tableau の総ユーザー数は、導入から1年弱で69名まで増加しました。現場の営業担当者がそれまでと同様に Salesforce を通じて Tableau ダッシュボードを閲覧できるシステムを構築したこととも相まって、Tableau の利用は医薬営業本部全体に拡大。データドリブンな営業・マーケティングの実現に向けて大きく加速したのです。

医薬営業本部では、自社品の販売実績データなど、社内に蓄積された営業活動に関するさまざまなデータを多くの社員が自ら Tableau で可視化・分析し、タイムリーな打ち手につなげられるようになりました。また、医薬品の市場データなどの社外のデータを Tableau に取り込むことで、たとえば販売実績の伸びているエリアを日本地図上の色の濃淡で表現するなど、従来は難しかった多角的な可視化・分析が可能になりました。

「医薬営業本部では現在、現場の営業担当者から上級管理職まで、多くの社員が Tableau を用いて意思決定しています。会議では、以前のように手間をかけて Excel のデータをもとに資料を作成することなく、Tableau のダッシュボードで鮮度の高いデータを見ながら議論し、経験や勘だけに頼らない営業・マーケティング戦略を立案・実行できるようになっています」(黒瀬氏)

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Tableau の社内定着化を円滑に進めるためスモールスタートを選択

Tableau は、『まさにこういうものを見せたかったんだ』というダッシュボードを簡単に作ることができる。触るのがすぐに楽しくなりました

Tableau 選定の理由について

Salesforce ファミリーの製品であること、データクレンジング・加工を効率化できること

データの読み込みやビジュアルの作成の速さ、ビジュアルの美しさ、使ったときの楽しさなど、同社が Tableau 選定時に高く評価したポイントの中で、特に重視したのは 2 つ。1 つは、 Salesforce ファミリーの製品であることです。

「社内には、いろいろなベンダーのシステムが乱立するのは、運用・保守面で勝手がよくない、という意見がありました。当社では BI ツールの刷新に先行して Salesforce を導入・利用していたので、同じパッケージとして使える Tableau なら社内的に説明しやすいと考えました」(黒瀬氏)

もう 1 つ決め手になったのは、黒瀬氏自身が前職で Tableau の優位性を目の当たりにしていたことだったといいます。

「Tableau を全社で利用しているクライアントと仕事をした際、Tableau Prep を使えば大容量データを簡単にクレンジング、加工できることを知りました。まさにその業務を効率化したいというのが、BI ツールの刷新を検討するきっかけでしたから、候補として Tableau が真っ先に思い浮かびました」(黒瀬氏)

データの読み込みやビジュアルの作成の速さ、ビジュアルの美しさ、使ったときの楽しさなど、Tableau 選定時に高く評価

Tableau を全社で利用しているクライアントと仕事をした際、Tableau Prep を使えば大容量データを簡単にクレンジング、加工できることを知りました。まさにその業務を効率化したいというのが、BI ツールの刷新を検討するきっかけでしたから、候補として Tableau が真っ先に思い浮かびました

Tableau の導入効果について

データクレンジングの作業時間を 20 分の 1 に圧縮、資料作成業務を 19% 削減

デジタルマーケティングチームの田端晴香氏と佐伯和音氏は、Tableau 導入による定性的な効果についてこう話します。

「以前の BI ツールでは、1 つのデータソースを使った分析しかできない、複数使う場合にはベンダーへの依頼が必要などの制約がありましたが、Tableau によってさまざまなデータを自由に組み合わせて分析できるようになりました」(田端氏)

「私はもともとデータを扱うスキルをまったく持っていませんでしたが、Tableau ならデータの取り込みやグラフの作成をドラッグ&ドロップなどの簡単な操作で行えます。実作業が大幅に効率化されたことで、相手に伝わりやすいデータの見せ方について試行錯誤するなど、本来の業務に時間を使えるようになりました」(佐伯氏)

Tableau 導入の効果は、数字にもはっきりと現れています。まず、従来手作業で月間 810 分かかっていたデータクレンジング業務は、Tableau Prep と RPA ツールを組み合わせたシステムの構築によりほぼ自動化され、月間 35 分、実に 20 分の 1 に圧縮されました。また、Tableau ダッシュボードを見ながら会議を進める文化が定着しつつあることによって、手作業で行われていた資料作成の業務が平均 19% 削減されるという効果が出ています。

「同時に、会議の場で経営層を含めて議論を進めやすくなり、意思決定のスピードが速くなりました。たとえば経営層から、ある経営指標について質問があったとき、以前なら『来月の会議までに調べます』とその場で回答できないケースが多々ありました。現在では、Tableau でさまざまな切り口から瞬時に答えられますから、それだけで少なくとも 1 か月のスピードアップにつながるわけです」(黒瀬氏)

Tableau による売上への効果を算出するのは簡単ではありませんが、影響を感じさせる事例は出てきています。たとえばある製品の売上が、Tableau 導入以降、目標を超過達成し続けているのは、その製品を担当するブランドマネージャーが Tableau の勉強と活用に積極的に取り組んでいることと無関係ではない、と黒瀬氏は分析しています。

データ読み込み・ビジュアル作成の速さや機能の豊富さ、直感的な操作性が魅力

以前の BI ツールでは、1つのデータソースを使った分析しかできない、複数使う場合にはベンダーへの依頼が必要などの制約がありましたが、Tableau によってさまざまなデータを自由に組み合わせて分析できるようになりました

今後の展開について

Tableau 全社展開でデータドリブン文化の定着化を目指す

医薬営業本部での成果を踏まえ、同社では生産本部など、他部門での Tableau の活用が始まっています。廣田氏は最後に、今後の展望についてこう語りました。

「経営層に『Tableau でこんなことができますが、全社展開してはどうですか?』とアイデアベースで提案したところ、とても前向きな反応で、総論として反対する人はいませんでした。一方で当社はまだ、全社でデータを活用していくための体制を整えられておらず、経営管理ダッシュボードといえるようなものも存在しません。経営管理部門と一緒に KPI を検討するとともに、体制づくりを進め、経営層を含めてデータに触れられる環境を実現する。それによってデータドリブン、つまりデータから得られる事実にもとづいて物事を決断する、という文化を社内に根づかせたいと考えています」(廣田氏)

 

Tableau ならデータの取り込みやグラフの作成をドラッグ&ドロップなどの簡単な操作で行える

実作業が大幅に効率化されたことで、相手に伝わりやすいデータの見せ方について試行錯誤するなど、本来の業務に時間を使えるようになりました

※ 本事例は 2023 年 7 月時点の情報です

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