Mitsubishi Heavy Industries

ユーザーがデータ加工・分析できる仕組みを整備


Tableau よるデータ分析の成功事例が生まれている

スマートファクトリーのための定量評価と見える化が定着

民間航空エンジン分野での競争力強化のため、三菱重工業のグループ会社として2014 年10 月に発足した三菱重工航空エンジン株式会社。ボーイング社やエアバス社などの民間航空機のエンジン共同開発・量産に参画する他、 日本国産のジェット旅客機として注目されるMRJ のエンジンでは最終組立も担当、国内外のエアライン向けのエンジンの整備修理事業にも携わっています。難易度の高い燃焼器やタービンなどに関する独自技術を活かすことで、世界最先端のジェットエンジンの開発・設計・製造で重要な役割を果たしています。

「航空機エンジン市場は長期にわたって年率5% 程度の成長を維持しており、これは今後も続くと見込まれています」と語るのは、三菱重工航空エンジン 経営管理部 IT 戦略グループ グループ長の吉野一広氏。市場規模は今後20 年で倍増すると予測されており、航空機の受注残も2016 年時点で5 ~ 10 年分の生産量に相当していると説明します。「航空機の数が2 倍になれば当社も2 倍の生産量を保つ必要がありますが、生産設備を2 倍にすることは困難です。そこで推進しているのが、IoT やAI を活用したサプライチェーン管理の高度化とスマートファクトリー化です」。

その前提となるのが「定量評価と見える化」だと吉野氏。人間の健康管理と同様に、会社の情報を集めて定量評価を行い、それにもとづいて会社や生産現場の状況を見える化することが欠かせないと説明します。そこで同社はまず、情報を蓄積する仕組みを整備。以前はユーザー自らが複数の社内DB からデータを収集して分析を行っていましたが、2015 年度に複数のDB のデータを集約する「e-Work DB」を構築すると共に、IT 部門が分析用のExcel のマクロなどでデータを加工し、ユーザーに提供する体制を整えていきました。

各部門が自らTableau を使うようになったことで、IT 戦略グループのレポート作成の作業負担が軽減しました。その分、データ管理やセキュリティ、IT をガバナンスなど、本来やるべき業務のための時間が確保しやすくなっています

Tableau: Tableau の導入・運用環境について教えてください。
吉野氏: ユーザーが増えるに伴い要求が多様化し、データ加工を行うマクロの開発・維持が困難になっていきました。この問題を解決するためには、ユーザー自らがデータ加工や分析が行える『セルフサービス型のBI ツール』を導入すべきだと考えました。

そこで複数のBI ツールを対象とした比較検討を実施。最終的にTableau の採用を決め、2016 年に試験導入を行いました。この時導入されたのは、Desktop × 4 ライセンスとServer × 10 ライセンス。グラフ作成などのニーズが高かった生産技術部門と品質保証部門、約10 人によって活用が開始されました。

Tableau の導入にあたっては、IT 部門とユーザーとの役割分担を明確化。IT 部門は分析に必要なデータ準備に注力し、ユーザーインターフェースはユーザーが好きなように作れるようにしました。データの”見せ方”は個人の感性や趣味によって好みが分かれ、これに対応するには作り込みに多大な時間と費用がかかると判断されたからです。

このような役割分担を実現するため、Tableau 活用を牽引する”リードマン”の育成も行っています。彼らが作成したテンプレートの数はすでに1,500 種類を突破。データ加工時間の短縮や多様なデータの可視化、データ更新頻度の向上に伴う問題の早期発見・対処など、様々な成功事例を生み出しています。

これに伴い「Tableau を使いたい」という社員も増加。導入部門は徐々に拡大し、2018 年度には全社の約7 割の部門が利用するようになっています。

Tableau: 今回のプロジェクトで Tableau を選定した理由を教えてください。
吉野氏: BI ツールの選定は、複数項目による総合評価で進められました。Tableau はその全ての項目を満たした上で、他社製品を大きく引き離す総合得点も獲得しています。

それらの項目の中でまず注目すべきなのが、レスポンススピードと使いやすさです。Excel マクロによるデータ加工はデータ更新作業が煩雑で、可視化のためのカスタマイズも困難でした。これに対してTableau は、データベースを直接参照できるためデータ更新をスピーディに行うことができ、表現のカスタマイズも容易です。一般的なビジネスユーザーにとっても、使いやすいと判断されたのです。サポート体制を含むトータルコストが低く、コストパフォーマンスが良いことも評価されました。

また、他社や海外グループ会社への展開も視野に入っていたため、グローバル展開の容易さについても評価。Tableau はクラウドサービスも用意されており、海外展開も容易だと判断されました。さらに、グラフやフィルター、ドリルダウン/ アップ、統計解析などの機能が網羅されていることも重視されました。

Tableau: Tableau の導入効果を教えてください。
吉野氏: Tableau の導入は、以下のような効果をもたらしています。1 つ目は、需要変化を把握できることです。客先からの要求は頻繁に変化しますが、以前は変化前との比較をExcel で行っていたため2 週間に1 度程度の確認が精一杯でした。現在ではTableau で比較対象を選択するだけでいつでもすぐに比較できるようになりました。

2 つ目は、ライン能力を確認しています。通常出来高や不適合数を、製造管理システムや設備IoT システムのデータと連携させ、工場ラインの能力を月毎に表示しています。このような分析を行うことで「能力が低かったのは何故なのか」といった、問題の深掘りができるようになりました。

3 つ目は、加工工程のリードタイムや待ち時間、不適合状態、加工前後の製品歪量の見える化を行っていることです。これは不良ゼロ活動の一環として毎週確認され、改善活動に活かされています。

最後に、加工サプライヤを品質と納期の両面で評価し、そのレポートをTableau で自動生成して各社に送付しています。最近では評価の元になったデータも送付、それを各社が再確認することで問題の深掘りに役立てています。

Tableau: 今後の展開について教えてください。
吉野氏: すでにユーザー部門では、自他ともに認める ”Tableau のスペシャリスト”が数名誕生しており、Tableau の使いこなしに関する情報交換も、彼らを中心に積極的に行われています。複数のユーザーが分析レポートを共有するケースも増えています。今後はデータ分析に AI なども活用すると共に、分析結果をフィードバックできるシステムインフラも確立していきます。これによってあらゆる変化に対応できる”魅せる工場”の実現を目指していきます。